日刊工業新聞 「大阪・中小製造業、“受注力”磨き生き残り」

2012/06/12

縮小する国内市場で生き残りを模索する中小製造業に技術力は不可欠だ。そのうえで、いっそうの工夫がなければ仕事を増やすことはできない。市場ニーズをつかみ取る“受注力”を高めようとする大阪の中小企業を取材した。

 

朝日熱処理工業(大阪府寝屋川市)は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に事業採択され、2010年に衛星用の特殊歯車の耐久性を向上する金属表面改質技術を開発した。その後、東京の展示会でNEDOとともに自社の技術を展示、PRすることができ、大手企業などから引き合いが増えた。同社の村田茂会長は「顧客の信頼が増した」と喜ぶ。

信頼の高まりは受注スタイルに変化を生んだ。従来は顧客から与えられた技術課題に対して自社負担で研究開発し、試作品を製作して受託加工の受注につなげるのが当たり前だった。それが最近は、技術課題の相談を受ける段階で秘密保持契約を交わし、研究開発だけを有償で受注できるようになった。村田会長はこうした成果から、「これからの製造業に求められるのは“受注力”だ」と感じているという。

特殊ネジを企画・販売する大丸鋲螺製作所(大阪市東成区)は11年に社内の無形の資産を洗い出そうと知的資産経営報告書を作った。その際に営業マンが、ゴム製Oリングが付いた「シールビス」などの特注ネジ商品を「特定の顧客にしか販売できていない」と気づいた。「サイズなどの品ぞろえと在庫を増やし標準品として販売してはどうか」という提案を受け、11年4月から現在まで7種の特注ネジを標準品化し、既存客以外に営業を始めた。すると、目新しい商品が増えたことで営業の訪問先のアポイントメントが取りやすくなり、年間2、3件ほどしか増えなかった新規顧客数が1年間で30件に急増した。ニッチ商品の掘り起こしに手応えを感じた細山田秀明社長は「規格品は大手の価格に太刀打ちできないが特殊品なら戦える」と目を輝かせる。

大型機械部品の溶接・切削加工を手がける鈴木製作所(大阪府東大阪市)はリーマン・ショック後に仕事が急減した。以前は「待っていても仕事があった」ため、営業担当者はいなかった。危機を感じた鈴木健史社長は製造業の営業代行を請け負うコラボレックス(大阪市中央区)に業務委託するとともに、自らも客先に足を運んで新規顧客の開拓に取り組んだ。

その結果、3年で年平均15件ほどの新規顧客が開拓できるようになり、古い顧客との入れ替わりが進んだ。現在は新しい顧客からの受注が全体の約4割を占める。鈴木社長は「顧客が多いほど景気の波に左右されにくくなる」と新規開拓のメリットを話す。コラボレックスの岸野浩通社長は「従来の活動範囲にこだわらず、外へ飛び出せば国内でもまだまだニーズはある」と説く。

顧客との共同研究、ニッチな需要に応える商品づくり、積極的な新規開拓など、今のモノづくり中小に必要なのは受注につなげる工夫だ。それは“製造サービス業”への脱皮と呼ぶこともできるだろう。